2004 トーヨー新報夏季セミナー
クレームなくすと豆腐がうまくなる
私の仕事はHACCP構築のコンサルティングです。具体的には、クレームをなくすためにどうしたらよいかを、文書を作り申請して最終的な認証取得までをやっています。具体的なクレームをどうやってなくすか、その工夫をどうしたらよいかを主に扱っています。クレームをなくすということはとてもうれしいことです。製品が安定しておいしくなる。つまりクレームをなくすことに成功すると製品がおいしくなって売れるようになる。クレームが少なくなって売れる。こういう大変な副産物があります。
HACCP構築にはそれほど費用は要らない
HACCPというと一般的には、お金がかかると言われています。それは明確な間違いです。HACCPをやるためにお金は大してかからない。勉強のための費用は必要ですが…。工場の増改築などハード面にお金が随分かかると思っている方が多いようです。これもある面では間違いです。HACCPのやり方は今までの施設・設備そのままでできます。ただし、工場の窓が不安定で虫が入ってくるなどこれは問題なので直さなければならない。また、調理機械が不安定で温度が頻繁に変わるなども直すか買い換えなければならない。こういう面では費用がかかるといえますが基本的には、皆さんが何年も何十年も豆腐を作ってこられたこれまでの施設・設備をそのまま利用して工夫、改善し、ルールを作ってよくしていく。それをどのようにやったらいいかをお話いたします。
HACCP構築の2つの目的 ―クレーム防止と安全の確保
HACCP構築の大きな目的は2つ。
一つ目はクレームをなくしたい。一般的にあるクレームは危害ではないクレームが多い。たとえば毛髪やごみ、虫などの混入は危害ではなく安全性とは関係ないが、しかし不快で気持ちが悪い。このクレームがとても多い。これがいつまでも続くと最近の消費者は神経質なので頻繁に文句をいう。結果、販売店が買ってくれなくなり会社の営業問題になってしまう。クレームというよりも経営の危機になる。だから安全とは直接に関係ないが不快なクレームをなくさなければならない。
2つ目はHACCP本来の目的である安全です。食中毒やけがをなくすこと。たとえば、ある大規模なレジャーセンターが何10人の食中毒を起こしたことがあります。40年前から同じ方式でやっているにもかかわらず食中毒が出たのはなぜか。それは40年前にはO157はいなかった。サルモネラ菌も弱く、SRSV(ノロウイルス)も貝から出てくるものしかありませんでした。しかしO157は20年前に見つかった。そのころは肉から離せば2〜3時間で死んだが、現在のO157は水分さえあれば8〜9週間生きている。SRSVは以前、貝からだけでしたが今はそこら辺にいるウイルスになった。昨年、一昨年と食パンや学校給食のパンで集団食中毒が何件かありましたが、そのうちの1件は指輪をしてパンを袋詰めしていた。指輪の間にSRSVが付着していたため、一個一個のパンにウイルスが付いて集団食中毒が起きた。昔から同じ方式でやっていてなぜ食中毒が起きたのか。それは環境が変化しウイルスが強くなっているからです。だから以前と同じやり方では通用しない。衛生管理を強化しなければならない理由です。
HACCP構築による3つの副産物 ―製品の安定と競争力、企業力の向上
HACCP構築がもたらす副産物には3つあります。一つは製品が安定すること。HACCPをやると温度管理がしっかりします。たとえば惣菜メーカーの場合。食中毒菌は75度C以上で死滅するので安全の確保には生存温度を75度C以上にすればよい。しかし温度が高すぎると製品は黒く焦げ、鮮度が落ちる。そこで機械のアラワンス(余裕)を考慮して75度Cから85度Cの間で設定する。85度Cは品質の限界温度でこれ以上はおいしくない。こうして温度設定の上限と下限を設けることで温度管理が安定し、結果として品質の安定をもたらす。また工場や人の衛生管理はウイルスやごみなどの混入を減らし製品の鮮度を高めます。2つ目の副産物はこうした品質の安定がもたらす製品の競争力の向上です。品質が安定することでいつでも同じおいしさを消費者に提供できる。だから客は安心して買えるし販売店も安心して売れるわけです。さらに3つ目として企業力の向上があります。整理整頓や手洗いなどを通して従業員の意識は高まります。不良品が減り、ロスが減り、ミスが減り、失敗が減る。その結果、工場の稼働率は高まり今まで80%だったのが90%になる。1日1トンの生産量が1トン百キロになり、1トン百50キロになる。同じシステム、同じ電気代、同じ人員でやっているにもかかわらず製品の生産量が増える。効率化によって収益が増加します。
HACCPと一般的衛生管理(PP)―キーワードは「少なくしてからとどめをさす」
ウイルスやごみ、ほこりなどが工場内になければ異物混入は起きない。では具体的にどのように取り組むか。簡単に言うと、ごみなどを減らすために掃除・洗浄を行うことです。まず一般的衛生管理(PP)は整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(5S)をしっかりして工場内の異物を少なくする。これによって異物
混入の苦情は確実に減ります。次にとどめをさす。異物混入のとどめには、今のところ低価格で確実な金属探知機を使う。金属が入っている場合、0.7ミリ以上のものだったらはねます。“少なくしてからとどめをさす”がHACCPの手法です。また食中毒をなくす場合にはどうしたらよいか。異物混入への対応と同様にまず、食中毒菌を少なくします。手洗いをしてウイルスを外に出し、冷蔵庫を低温5度C以下に保ち増殖を防ぐ。しかしこれだけではウイルスはなくならない。そこでとどめとして、残った食中毒菌を75度C以上の高温で加熱殺菌します。牛乳の場合は百20度Cで3百秒、65度Cで30分加熱して殺菌します。
国際的なガイドライン 衛生管理の8つの規則
一般的衛生管理(PP)を実行する際の5項目不快なクレームをなくすにはどうしたらいいか。これはPPをしっかりやることで解消できます。しっかりやるとは次に挙げる5項目を実行することです。内容、頻度、担当、確認、記録の5つ。「内容」とはたとえば床や天井の清掃を指します。床清掃の「頻度」は毎日、天井は半年に1度など。
壁の清掃は腰の位置から下は毎日で、腰から上は週に1度など工場によって頻度が異なる。そして清掃の「担当」は誰か、きれいになっているかどうかを「確認」します。確認は掃除担当者以外が行い、結果を「記録」。この5項目を決めていればよくなります。中でも一番大切なのは頻度です。清掃の頻度が決まっていないと、いつもいる場所の汚れに気づかない場合があるからです。
一般的衛生管理とは―8つの規則
PPには8つの規則がある。これは国際的なガイドラインで、先進国では衛生管理の基準になっています。日本の場合は厚生労働省の衛生管理の基準。具体的には各地域の保健所の担当者が皆さんの工場でチェックする内容は、以下8つの規則を元にしています。@原材料の生産。これは安全で正体の明らかな食品の材料の仕入れです。今問題のトレーサビリティーとも関わり、何か問題が発生したときにさかのぼって調べます。A施設の設計および設備。これは衛生管理のしやすい施設・設備にする。そのためにわざわざ工場を変える必要はありませんが、できるだけ汚れにくく掃除しやすくする。B取り扱いの管理。冷蔵庫を何度以下にするか、調理の温度をどうするかなど、製造中における衛生と安全管理、これをさらに科学的に発展させるとHACCPになります。C施設の保守管理および衛生。掃除や洗浄などで施設・設備のソフト面に当たります。最重要で手間がかかる。Aのハード面に対応します。Dヒトの衛生。現場に入る人は清潔にしなけらばならない。一般的に個人衛生といわれます。E輸送、できた製品を納入先に持っていく方法。冷蔵するなど温度管理をして製品を客のところまで安全に運ぶ。Fできた製品に付けるラベルを間違わない。使い方を客に正確に伝えます。G従業員に対する教育訓練。これはなかなか分かってくれないなど一番ストレスがかかりますが、きちんとしなければいけない。とどめはどうするかというと、すでにふれたとおり、高温で食中毒菌を殺す。また、金属探知機を使う。これらはHACCPの中でCCPと呼ばれます。
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