2004年(平成16年)7月5日 日本食糧新聞 記事本文

中小食品工場HACCPにこう取組む

HACCPをやれば元気が出る→元気な企業はますます儲かる・・・という論理が
浸透してきた

(株)フーズデザイン 代表取締役 加藤光夫先生(国際HACCP同盟認定リード・インストラクター)

●流通業界が安全品質管理は売れると気がついた

 トレーサビリティという言葉は一般消費者にはまだなじみが少ないが、ずいぶん前から「生産者の見える売り場、商品」が信用の一つになってきている。生産地だけでなく、生産者の氏名や写真、「私が作りました」といったラベル、生産地証明書など、いろいろな取組みが顧客獲得の要素としてなされている。キーワードで言えば「正体明らか」ということになる。実際小売業に対するアンケートでも「トレーサビリティは商売になる」とみていることが分かる。
 トレーサビリティは、HACCP12ステップの「2.製品説明、原材料」の中で必要なものだし、HACCP土台となるCodex食品衛生の一般的原則「3.原材料の生産」で安全性と衛生管理および入先までの輸送の中で管理されなければならないものである。これが急に出てきたのはBSEからだが、牛のトレーサビリティからスタートをして、すぐにすべての食材が対象となった。
 食品の安全管理は一般的衛生管理を土台としてHACCPを構築する構図になるが、この中の一部のトレーサビリティがきっかけになって、すべての食品の安全管理が構築されていくようになれば、とても良いことだ。
 小売業とフードサービスが食品安全に神経質になってきたことは、最終消費者が求めていることで、その下人は、安全に関心がますます高まっている、と見られるが、皮肉に見れば「信用していない」jからだ。多くの不祥事が続々と出てきて、いまだ収まりがつくどころか、ますますボロが出てきているといった状況だ。こういった中で、中小の食品工場に対するユーザー側の監視はますます厳しくなっているのだが、これは実は積極的にまじめに仕事をしている食品工場にとって大きなチャンスだ。

●特定のメーカーにオーダーが集中する時代

 数年前、北海道の企業から出たO157入りイクラの醤油漬け事件で、全国の製品は一斉に売れなくなってしまったのだが、この後、多くの小売やフードサービスのバイヤーは、これを安全に製造しているメーカーを探していた。イクラの醤油漬けはおいしい、日本の食文化だ、だから騒ぎが収まったら再び必要な食材になる。しかし、また事故を起こしてしまったら大変なので、安心できるメーカーを探したわけだ。そしてそのキーワードがHACCPだった。
 HACCPを実施しているメーカーはいくつかすぐに出てきた。それらのメーカーにオーダーが殺到していったのだ。イクラの醤油漬けの消費量はいきなり増えるものではないし減るものではない、ある程度の安定したものが全国に流通している。しかし、こういった事故の後、ユーザーからのオーダーは特定のメーカーに集中することになるのだ。オーダーが行かなくなったメーカーはなくなっていくことになる。

●クレーム削減会議

 ある、かなりの物量を仕入れ、加工、販売している食肉企業では、自身がHACCPに取り組んでいるだけでなく、サプライヤー全社に対しても安全性の確保を要求していて、その活動としてクレーム削減会議というのを開催している。数十企業からの納入品の不良率を分析し、お互いのクレームを削減するパワーにしている。どのようなクレームがあったか納入数量に対しての比率は、などの資料を開示する。成績の良いサプライヤー、つまりクレームが少ないところは表彰をする。
 成績の良いサプライヤーを見ると、すべての納入先でも同じ状況で、特別クレーム削減会議をやっているところへの成績が良いわけではない。どのような活動をしているのかを聞いてみると、地道な一般的衛生管理とHACCPでやっている。それを「当たり前の活動として実施している」という回答が返ってくる。淡々と活動し、良い成績を確保しているのだ。

●元気なところはますます元気に

 中小食品工場でHACCPを中心とする安全と品質管理に積極的なところは、元気で、積極的で、まじめで、熱心なところだ。だからオーダーが集まってくる。元気なところはますます元気になっていくのだ。国の総合衛生管理製造過程だけの時代から、HACCP手法支援法、地方自治体のいろいろな形の自主認証、専門認証機関、そしてISO22000と、象徴が豊かになってきた。元気な中小食品工場の時代になってきた。